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司法書士と行政書士、どっちがどっち? 不動産の登記なら●●書士!?

司法書士と行政書士は、取り扱う職務内容がだいぶ違うのですが、名前はそっくりです。ライターのよっぴーさんでさえ取り違えていたことがあるので、うっかり混同してしまう人が多いのもうなずけます。

結論からいうと、不動産の登記申請(法人登記などの商業登記も)をお願いするのは司法書士さん。不動産売買において、司法書士は重要な役割を担っています。

名前が似ていることで混同する人も多い?

以前知人から相談を受けたことがありました。兄弟3人で相続した土地建物について、司法書士が売却を強く迫っているのだとか。しかも特定の不動産屋を勧めてきて「ここに専任媒介ですべてを任せなさい」と言っているという、にわかには信じられない状況。

「その司法書士はどんな人なんですか?」

と尋ねると、

「亡くなった父の元同僚の紹介で……」

という話でした。そこで名刺を見せてもらうと、その肩書きは「行政書士」。どうやら司法書士と行政書士の名称がそっくりで多くの人がこのように混同してしまうようです。

もちろん優秀で信頼に足る行政書士さんはたくさんいますが(我々も業務でよくお世話になっています)、不動産の登記に関しては、司法書士さんにお願いするほうが確実。というより、行政書士の職域とはちょっと違っていますね。

行政書士とは何か?

日本行政書士会連合会のサイトでは、「行政書士とは?」というページで、次のように解説しています。

行政書士は、行政書士法(昭和26年2月22日法律第4号)に基づく国家資格で、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する許認可等の申請書類の作成並びに提出手続代理、遺言書等の権利義務、事実証明及び契約書の作成、行政不服申立て手続き代理等を行います。

簡単に言えば、行政手続きの専門家。不動産に関係する事柄で依頼をするとしたら、上述した農地法に基づく転用申請(農地を宅地等にするための申請)や、旅館業の許可申請などが代表的な職務。職務範囲が広範にわたっておりつかみづらいため、どういう仕事をお願いするべきなのかピンとこない側面もあります。一方、職域が広いだけに、それと知らずにお世話になっている可能性もあります。たとえば、自動車の名義変更などを専門家にお願いしたことがある人は、行政書士さんのお世話になった可能性大でしょう。

司法書士とは何か?

やや乱暴にまとめてしまうと、裁判所や法務局(登記所)に提出する書類の作成や、登記申請の代理等がもともとの業務だったといえます。我々が不動産の売買をして、所有権移転登記を行う時に依頼するのが、司法書士さん。登記の専門家であり、不動産取引においてきわめて重要な位置を占めています。

ちょっとした動産(持ち運びできそうな品物)の売買(たとえば鉛筆を買う場合)であれば、代金の支払いとその物(鉛筆)の引き渡しは同時履行です。ところが不動産の場合、代金全額を支払った時点で所有権の移転登記を行うため、お金を払ったのに所有権移転登記ができない……というケースが考えられます。条件が揃っていないとか、書類に不備があるとか、様々な危険性があるため、司法書士が所有権移転登記の確実性を担保している、ということなのです。

従って、不動産仲介業務や、買取再販業務に司法書士は欠かせません。一般の売主・買主の立場で考えても、司法書士がいない取引は相当危ないはずです。

不動産との関わりは薄くなりますが、他にも司法書士が行える業務は多く、たとえば簡易裁判所での訴訟代理、家庭裁判所から選任される成年後見などは、最近よく話題になります。

不動産にからんで行政書士に依頼する事項は?

ここまで読むと不動産取引に行政書士は関係ないのか……という印象をもたれるかも知れません。しかし行政書士さんに依頼した方がスムーズに進む事項もあります。

上述した農地法の申請などは、その代表例。たとえば農家ではない人が農地を買うには農地法第五条の許可を得て、その許可証を添付書類として所有権移転登記申請を行う必要があります。

農地法第五条の許可とは、一定の条件を満たしている場合に、売買にあたって農地を宅地に転用してもよいと認めるものです。自分で申請することもできますが、売買の期間が長引いたり頓挫する危険もあるため、行政書士さんに依頼した方が安心できます。その他にも農振農用地からの除外申請や、購入した土地に旅館を建てるなどの許認可を要する事業を行う場合に、申請書の作成や申請代理をお願いすることができます。ちょっとした手数料をケチって売買がとん挫するようでは本末転倒ですから、こういった業務は専門家に依頼したほうが安心でしょう。

不動産売買にからんで、所有権移転登記申請や抵当権設定・抹消登記を依頼するとしたら司法書士さん。不動産売買と関連して、地目を畑から宅地にするための行政手続きなどをお願いするとしたら行政書士さんに依頼することになります(地目変更登記自体は土地家屋調査士さん)。

また、土地や建物を購入して、旅館業など許認可が必要な事業を行いたい場合は行政書士さんに相談しましょう。

農地転用について、詳しくは以下の記事で解説しています。

【五条申請】農地を売却するには? 宅地転用可能な条件を整理

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