謎のイラストで有名な中村真(マコツ)弁護士が著した、相続法関連の一般書。一般だけどたぶん、法曹関連の人を主なターゲットにしているようです。しかし、一般の人も読んで楽しめます。おまけに、謎のイラストも堪能できる楽しい一冊です。イラスト自体は素人っぽいし、デッサンも不正確だし、なんかヘンだけど、正体不明のパワーに満ちています。
さて、本書のおすすめはズバリ「付録」。「民法改正が”相続法”にも」と題された付録は、本書執筆のタイミングが絶妙だったせいか、付録なのに存在感がものすごいです。かなり参考になりますので、ぜひ手に取ってみてください。長いけれど、一番気になったところを抜粋してみます。
まず何より先に触れておかなければならないのは、遺留分制度の大幅な見直しです。 これまでの制度では、遺留分減殺請求権の行使(現民1031)は物権的効果が生じるものとされていました。 このために、ひとたび遺留分減殺請求権が行使されると、遺贈された不動産や有価証券等の承継手続きもストップしてしまうことになり、そこから長い長い相続争いが始まってしまう原因にもなっていたのです。減殺対象となった財産に共有状態が生じるため、受遺者・遺贈者と遺留分権利者との間で、共有物分割請求訴訟にまで発展することも珍しくありませんでした。 (中略) また、遺留分権利者も「お金で払ってくれたらそれでいい。不動産の共有持分や中途半端な株式をもらっても困る」という場合は多く、審判や調停でも金銭解決を内容とする和解条項、調停条項はこれまでもよく利用されてきました。 そこで、今回の改正では、物権的効果を有する遺留分減殺請求権を、「遺留分侵害額請求権」(新民1046 I)という金銭請求権に改め、金銭での解決をデフォルトに定め直しています。
『相続道の歩き方』
なるほど。という感じでよくわかる解説です。
これまでの民法改正による相続法の改正は、新聞のコラムなどでも目にしていました。しかし、ファイナンシャルプランナーなどの解説は雲をつかむようでわかりにくく、何がポイントなんだろうか? と疑問を抱いていたものです。
その点、マコツ先生は現役バリバリの法曹関係者なので、きっちりと的を射た解説をしてくれています。相続法について興味があれば、専門外の方でも読んでみて損のない一冊です。
もちろん、付録以外の本編にも、参考になる内容がばっちりと詰まっています。